「大企業」vs「中小ベンチャー」・・・これは「家を買うなら一戸建てか、マンションか」並みの難問です。「そんなの大企業に決まってるじゃん!」と思う人もいるかもですが、私はそうは思いません。
私はずっと大企業相手に仕事してきましたが、自分自身は大企業に所属したことがなく、ずっと中小・ベンチャー育ちです。今回はそんな私の考える、大企業と中小ベンチャーのメリット・デメリットの比較論です。
いまにして思う、中小ベンチャー育ちのメリット
正直、若い頃は大企業勤めの人が羨ましかった。
誰もが知ってる有名企業で、立派なオフィスで働いて、福利厚生も充実していて、大きな仕事ができて、おまけに給料も高い。定年まで勤めたら退職金もたくさんもらえる。
でも、年齢を重ねるにつれて、中小・ベンチャー育ちでよかったな、と感じるようになりました。
なぜか?
その理由の一つ目は、中小・ベンチャーの方が人が少なくて、自分でやらないといけない業務範囲が広く、仕事がキツイ分だけ鍛えられた実感があるからです。
大企業は大人数の組織で動く分だけ、仕事の役割分担が細かく分かれています。
たとえばWebディレクターという職種でも、提案する人、構築する人、運用する人に分かれている。ところが中小ベンチャーだと、1人でやらないといけない。単純に3倍大変なワケです。提案から納品、運用まで1人なのは孤独だし、人任せにできないストレスは半端ないです。おまけに私は営業まで兼ねていました。
でもその一方、チームの人数が少ない分、コミュニケーションのロスが少なくて、効率的です。処理スピードも速く、小回りも効きます。人間というのは面白くて、誰かがやるだろう、と考えるといくらでも怠けますが、少人数で、自分でやらないとならない!となると必死で仕事を効率化したり、あらゆる知恵を絞ってなんとかしようとします。なんとかしないと自分が死んでしまいますからね(笑)。
なので私は中小・ベンチャーで働いたことで、処理能力とスピードを手に入れたのだと思っています。
「後ろに誰もいない」プレッシャーとの戦い
私が上場を目指す成長途上のベンチャー勤めで事業責任者をしていた頃、大企業に勤めていた30代前半の男性が転職したいと言ってきました。彼は「分業で部分的な仕事しかさせてもらえないので、もっと上流から下流まで、全部の工程を把握したい」と言って、実際に転職して来ました。
ところが、数か月も経たずに辞めて行きました。理由を聞くと「なんでも1人でやるのは想像以上にキツかった、後ろに人がいないプレッシャーは怖すぎる」と。
そりゃそうだろう、と思いました。彼がこれまで勤めていた会社では5人から10人くらいでやってた仕事を、この会社では2、3人でこなしてましたからね。でも、それを希望してきたんじゃないの?とすごく残念な気持ちでした。
きっと彼の中では「人が少なくて幅広く自由に仕事できる」メリットよりも、「人が少なくて自分ばっかり大変だ」という理不尽さの方が、勝ってしまったのでしょう。
でも、中小ベンチャーのよさはその理不尽さとかプレッシャーを乗り越えて、自分で思うように仕事が進められるようになったときにわかるのです。なので、ここで辞めたらもったいないのにな、と今も悔いが残っています。
年齢を重ねると実感する「仕事以外」の負荷
中小・ベンチャー育ちでよかったな、と思う二つ目の理由は、仕事以外のめんどくささの少なさ、にあります。これは年齢を重ねるごとに実感しました。
大企業はどうしても関係者、ステークホルダーの数が多いので、何か新しいことをやりたい!と思っても、事業部長クラスであってもそう簡単には許してもらえません。さらに自分の上にいるいろんな偉い人を説得しないといけない。「ウチの社風に合わない」とか、訳の分からない理由で、誰かわからない相手に拒絶されることも多いでしょう。それも仕事のうちだ、という人もいますけど、私は本質的じゃないと思うんですよね。
事実、誰もがうらやむ大企業勤めの人から「アナタはいいですよね」と逆にうらやましがられた経験が何度もあります。「・・・こっちは誰も知らない中小企業勤めなのに、皮肉?」かと思いましたが、まごうことなきその方の本音でした。
詳しく聞けば、その方は大企業ならではの社内調整に疲れ果てていました。自分の上に数人しかいないのと、何十人も偉い人がいるのとでは、意思決定までのタフさもスピードも、まるで違います。
変化の激しい時代に即応できるのは?
この差は、変化の激しい時代においてはさらに顕著になると思います。
前例のない課題解決には、これまでの経験とか勘は役に立たないことの方が多い。変化を捉えて俊敏に動かないといけない。であれば小回りの利く中小ベンチャーの方が有利だったりもします。
それに大企業ではある年齢層に達したら現場を離れて、組織の管理をする仕事に回ります。現場のプレイヤーとしての能力は忘れなければなりません。もちろんそれは大切な役割ですが、あくまでもその大企業が存続する前提の役割です。この先数十年、安泰な大企業っていくつあるんでしょうか。
これまでの時代は、大企業じゃないと受けられない仕事の方が多かった。もちろんこれからも一定数はそうした大規模な事業も残るでしょうけど、意味もなく人数ばかりが多くて、その実態は全員で何人分の仕事してるの?実経費より人件費の方が高いんじゃないの?みたいな組織は、仕事においては敬遠されるんじゃないでしょうか。
それより少数精鋭で、ホントに仕事してる人だけがいる中小ベンチャーの方が、スピード感とコストも含めて、魅力的に映る時代な気がしています。
まとめ
あくまでも中小・ベンチャー育ちの私見ですので、「いやいややっぱり大企業にこしたことはない」と思う方もいるでしょう。
でも、もはや大企業のブランドにしがみついて、定年まで生き残れる保証はどこにもありませんよね。それよりも人よりも少しでも幅広く、数多く、深い仕事をした人の方が生き残れるんじゃないでしょうか。
なので、もしもあなたが、大企業に勤めているけど身動きがとりづらくて中小ベンチャーに転職を考えているとしたら、まよわず飛び出してみることをオススメします。
たぶん想像以上に大変かもしれませんが、その組織が「少数精鋭」なら・・・一生モノの仕事に出逢える経験ができるでしょう。
●もはや企業の「規模」で選ぶ時代は終わった!
●需要なのは仕事の仕方と意思決定の俊敏性(アジリティ)
●「中小だから」と躊躇わず、成長が実感できる会社を選ぼう!
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